Prolog

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今夜、いつもの部屋で。 スーツの胸ポケットをぶるぶると振動させたスマホを取り出し、メッセンジャーを開く。 画面には見慣れた一文。 了解です 返事は心の中で唱えた。 返事を送信する事は許されていない。 今俺の目の前にあるメッセージも、数分後にはこのチャットルームから削除されているはず。 何故なら、送信者の彼は俺の恋人ではあるが、彼からすると俺のくくりは愛人でしかないから。 恋人よりも愛されていそうな文字列だが、恋人よりも地位が低い気がするこの“愛人”という立場は一体なんなんだろう。 セントラルホテル 2017号室のドアの前で小さく一息つく。 あのメッセージが来た日は、終業後ひとりでこのホテルに来る。 週に一度、不定期。 俺は毎週この日を待ちわびている。 彼の愛を全身で浴びる為に。
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