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部屋に入るなり見もしないテレビを着け、スーツのジャケットをハンガーに掛ける。
タバコを咥えたまま、見飽きたルームサービスのメニューを開いた。
俺、夏川篤紀はこんな不毛な関係を2年近く続けている。
しかも、男と。
俺の24年の人生で付き合ってきた相手はモチロン女の方が多いけど、俺の欲求を一番満たしてくれたのが佐久間部長だった。
ただ、それだけ。
女の子はふわふわしてて、可愛いとは思うけど…
イマイチ俺を満足させてくれないんだよね。
俺がそうだから気付いちゃうんだろうけど、愛されたいって気持ちが強すぎて。
お互いが愛されたがってたら、誰が愛してくれんのってハナシ。
歳下女子とかはホント無理。
その点、歳上男子は無敵だって事に気付いちゃったってワケ。
「佐久間部長まだかな…」
一度も視線を送っていないテレビからは、ゴールデンタイムらしくお笑い芸人の甲高い声が響いている。
スマホでSNSを流し読みしていると、別のSNSのメッセンジャーがメッセージを受信した。
慌ててアプリを開くと、誰からのメッセージかも確認できないまま、チャットルームが開いてしまった。
チャットルームのタイトルは【東日本流通本部】
「…あちゃー…」
東日本流通本部とは、俺の所属する部署。
正式には製造部東日本流通本部なんて長い名称。
ここに所属している約20名程が詰め込まれたチャットルームでは、東日本担当主任の黒瀬主任が何やら叫んでいる。
嫌な予感しかしない…
見えている訳でもないのに、俺がコソコソとチャットルームを閉じようとした瞬間。
ピコーンと軽快な音を立てたスマホを凝視する。
黒瀬[今見てるの夏川だろ]
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