プロローグ

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高校生二年生の石川美紅は、何時もより帰宅が遅くなった。 電車通学をしているのだが、駅で急病人が発生した為に電車が遅れてしまったのだ。 母親にはメールで連絡を入れてあるし、それに対して、 「気を付けてね」 と返信を貰っているので、余計な心配を掛ける問題は無かった。 急病人は仕方の無い事だと解っているが、特にする事も無い帰宅中と言う時間が勿体無いと思った。 特に急がなければならない理由は無い。 自宅の最寄り駅にある本屋に、少し立ち寄りたいとは思っていたが、それも今日である必要も無い。 それでも電車が遅れてしまうのは、自分の時間が削られた様な気分になった。 彼女の時間を使わせたその急病人が、どうなったのかは解らない。 知り合いならともかく、全く知らない他人に対して、一介の高校生である彼女に、できる事は何も無いのだ。 駅員と本人の判断で、必要なら救急車を呼ぶのだろう。 そもそも、未成年者の彼女に何かを求めてくる大人もいない。 全ての判断と処理は、その場に居合わせた大人がすべき責任なのだろう。 だから彼女にとっては、関係の無い事なのだ。 ただ、電車が遅れた。 誰の過失でも無いので、致し方ない事だ。
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