赤いタオル

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赤いタオル

 入社して半年。  大きな会社ではないので、社内の掃除は社員が手分けをしてやっている。  仕事と同時にそういった雑用も覚えていったけれど、一つ、気になっていることがあった。  社内には、トイレや給湯室、食堂など、水を使う場所が幾つかあって、そこには手拭き用のタオルがかけられているのだが、何故か、二ヶ所ある女子トイレの片方だけ、赤いタオルが使われているのだ。  清潔さを保つため、他は総て、汚れがすぐに判る白いタオルなのに、何故かそこのタオルだけは赤色なのだ。  何か理由がるあのかと、先輩社員達にも聞いてみたが、昔からそうだったのでそうしていると答えるばかりで、真相が判らない。  結局答えの判らぬまま、でも、そうしろと減ならそうしようと、私も、掃除でタオルを交換する際は、そこだけは赤色のタオルをかけるようにしていた。  だけどある日、洗い替えを含めて三枚ある赤いタオルが、一枚は使用済み、他の二枚は他のことに使われてしまって、替えがなくなってしまったのだ。  タオルは、掃除の際には必ず交換。これは義務付けられているから、今使っている物をそのまま残す訳にはいかない。かといって、濡れたままの洗濯物を替えにすることもできない。  少し悩んだ後、私は、今日だけだからと自分で自分に言い聞かせ、他の白いタオルをかけることにした。  幸い、定時まで後一時間ばかりだ。今からならそこまでトイレを利用する人はいないだろうから、明日の朝一番でタオルを替えればバレずにすむ可能性が高い。  そんな考えで白いタオルをかけ、私は業務へと戻った。  やがて定時となり、今日は特に残業の人もいないらしく、誰もが帰路に着き出す。むろん私も帰ろうと思い、席を立った瞬間、下腹に痛みが湧いた。  よろよろと近い方のトイレへ向かったが、何故かどこも使用中で入れない。だから私は、仕方なくもう片方のトイレに向かった。  そちらはさっきとはうって変わり、誰一人利用者はいなかった。それを幸いと慌てて個室に飛び込んだが、直前までのおなかの痛みは嘘のように引いていて、このままこうしていても出るものが出る気配はない。
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