第十章『露梁海戦』

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明軍の使者は李舜臣に会うなりこう切り出した。 「李様、陳璘将軍は倭軍と早く和議を結ぶべきと申されております。一度は和議を結んでおきながら反故とされるのは信義に反するとお考えです」 何と白々しい事を話すのかと李舜臣は呆れていたが、そんな素振りを全く見せずに答えた。 「使者殿、お聞きの通り倭の国では君主が死んだとのこと。敵を殲滅させるのは今しかありませぬ。そのためにもこの包囲を解く事は出来ませぬ。此処は先のことを考慮して動かなければなりませぬ」 その後も押し問答が続いたが、話は平行線のまま決着をつけられなかった。そして使者が帰った直後、驚くべき知らせが舞い込んできた。 「提督!倭の水軍が此方に迫っているとの報告がありました!」 李舜臣は配下の報告を聞くと舌打ちをして机を叩いた。 「ちっ、これも陳璘のせいじゃ!順天城と使者のやり取りをすれば警備が疎かになるのも当たり前。城から抜け出した者が援軍の要請をしたのであろう。このままでは我等が腹背に敵を受ける事になる。直ぐに先手を打つ。出撃じゃ!明軍に知らせよ!」 そう言うと自ら水軍を率いて出陣していった。陳璘もこうなれば出陣しない訳にはいかない。朝鮮水軍と歩調を合わせる事となった。
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