第一章『終わりなき交渉』

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義智は二年前、行長の娘を娶り義理の親子となっていた。 以前は才能豊かな若者と思っていたが、このような無分別な物言いをしようとは。 (それも詮なきことか・・・。ここまでの逆境は初めてであろう。まともな判断など出来ようはずがない・・・・・。) 行長はため息をつきながら首を振る。 「・・・・お主も知っての通り、太閤殿下はこの戦は大勝しているとしか思ってはおられぬ。・・・・・まぁ、それは我等が苟且の事しか言うておらぬからであるが・・・・・。 和睦の申し出など認めて戴けるはずがない。その様なことを申し出てみようものなら我等の首は即座に離れようぞ。」 若干の怒気を帯びた返答に義智は言葉に窮し、顔を落とした。 「それにしても忌々しきはあの髭達磨よ!上手くいきかけた停戦を何度ぶち壊せば気が済むのじゃ! まだ儂を目の敵にしておるのか!」
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