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「ねぇ、部費の予算チェック終わってないの? サインされてないんだけど」
「え?」
会長の聖澤先輩が仕事のチェックリストに目を通して、そんな事を呟く。
清水さんは手につけていた書類から目を離して聖澤先輩の方を向く。そしてすぐ僕に視線が向けられる。
「私、前に頼んだわよね。まだできてないの?」
真顔で聞いてくる清水さんに僕は圧迫感を覚えながら血の気が引くのを感じた。
やってしまった。
「聞いてる?」
低いトーンで清水さんは言う。
「えーと、その」
僕の頭の中で巡るのは言い訳ばかり。
忘れてたなんて言えるわけない。適当な嘘でも吐いて誤魔化せないだろうか。
自分の身を守ろうと必死に嘘を考えるけれどそんな僕の愚考を読み取られたのか清水さんは眉を吊り上げ、立ち上がる。
「あんたねぇ。優先順位も考えないで適当に仕事しないでよね! 予算チェックは締め切り明日よっ?」
バンッと、手の平で机を叩きながら一喝する清水さん。いつも以上の迫力に息がつまる。
「すみません、」
「謝ってる暇があったらさっさとしなさい!」
「で、でもまだやること残ってて」
「今やってるのはすぐにやらなきゃならないことじやないでしょうが! あんた、何も分かってないじゃん!」
「すみませんっ、」
予想以上に怒鳴られて僕は気圧されてのっぴきらない思いになって、頭の中が真っ白になる。
「華凛ちゃん、怒りすぎよ。祐介君はまだ入って間もないんだから優しくしないと」
あまりにも一方的な状況で僕がかわいそうに見えたのか聖澤先輩がフォローに入ってくれた。
「でもっ、こいつ全然仕事できないんですよっ? 間もないとは言っても一週間です。いい加減慣れてもらわないと」
「まぁまぁ。華凛ちゃん、あんまり言っても逆効果だし。あんまり祐介君をいじめないであげてよ」
友達の風香も僕の方を持ってくれた。
でも女の子二人にフォローされる僕はとても情けなかった。
「はぁ。大体連れてきたのは風香でしょ? 風香の友達なら大丈夫って勝手に安心してたけど間違いだったわ。あんたさぁ、友達とワイワイしたいだけでここに入ってきたなら辞めてよね。そういうのはサークルとか部活でやって。生徒会の仕事はそんな甘っちょろいもんじゃないのよ」
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