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月詠は秘書という立場を利用して九十雲さんに対してボスとしてああしろこうしろ、だのしょっちゅう説教じみたことを言っているのを見るが、ボスとしてだなんてそんなのはカタチだけに過ぎない。あの男はただ九十雲さんを独占して、自分の思い通りにしたいだけだ。
月詠には確かに実力はあるし、期待されたこと以上のことをこなすことを当たり前としているのはこの世界に生きる者として凄いと思う。そこは素直に認めるが尊敬など絶対にしないし、あの男が"秘書"であることは永遠に認めない。
…九十雲さんも一体何を考えているんだろうか。俺はあくまで"犬"という立場なわけだし、そんな立場などなくとも九十雲さんの言うことは絶対だと彼の側に立ったその日から決めているから意見などする気はないが。
「じゃあリア…Io vado<いってきます>」
「…Buona giornata<いってらっしゃい>」
ちゅ、とリップノイズをきかせ軽く頬に口付けられたので、お返しに膝まづいて爪先に同じように軽く口付けると、ふわりと優しく頭を撫でられた。
この人の、この手の感触を俺は一生感じていたい。
それが、俺にとって最高の悦楽なのだから。
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