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「こんなところで立ち話もなんでしょう、校舎に入って歩きながらでもいいんじゃないの」
「…それもそうだな、じゃあまずどっから…」
「ちょーっと待った」
「ッチ、人の話遮ってんじゃねえよ!」
校舎に入るよう促し先頭を歩いていた華路に続いて歩を進めようとした華蜜を遮り襟首を掴んで引き留めた月詠に、身を捩り拘束を解いたかと思えばまたぎゃあぎゃあと騒ぎ出した姿に思わず呆れを含んだ溜息が漏れる。
お前はいちいち騒がないと口を開けないのか…?
「折角四人もいることだし二手に別れようぜ?ってことで華路は俺と一緒、華蜜はリアとペアな」
「はァ?別に態々分けなくたって…」
「俺たちは上三階、華蜜たちは下三階案内すれば時間短縮になるだろ。こんだけ広い校舎を固まっていちいち細かく回ってる間に九十雲たちが帰って来たらお互い困るだろ?」
「っちょっと…!」
口を挟む暇など与えぬようぺらぺらと胡散臭い笑みを貼り付けたまま押し通した月詠は、こちらの返答は聞き入れるつもりもないようでそのまま華路の手首を掴みさっさと校舎の中へと姿を消した。
…あの野郎、この七面倒臭い男俺に押し付けやがったな糞が。
…こうして、冒頭のこの男と二人きりという状態に戻るのだ。
必要に駆られなければ一切口を開くことがない俺と、一人でも口を閉じることなく喚き散らす華蜜。相性は最悪、これ程シュールな組み合わせもなかなかないのではなかろうか。
せめて華路のほうであれば無駄口を叩くこともなく穏便かつ迅速に事を運べたというのに…あの男、絶対このことは九十雲さんに告げ口して叱咤して貰おう。
「チッ…取り敢えず入るぞ」
「…」
「テメェ返事くらいしろ!」
…嗚呼、先が思いやられる。
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