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ぐちゃ、
血濡れになった手と、その手に収まった‘’ソレ‘’から生々しい音がし、気持ち悪さと込み上げる憎しみを誤魔化す様に思い切り力を込め、‘’ソレ‘’を握り潰した。
「貴、様…っ、なにを……っゴホ、」
「……」
ごぽり、と嫌な音と共に噎せるそいつを一瞥し、とどめとばかりにぽっかりと穴の開いた‘’ソレ‘’が収められていた其処を勢い良く、全体重をかけ踏みつければ、間違いなく致死量であろう血を吐き出し、やがてピクリともしなくなった。
……屑が。
血に染まり真っ赤に濡れた、予め用意し敷き詰めておいた花の絨毯の上にそいつを横たわらせ、自分の足跡や争い飛び散った痕跡を綺麗に、満に一つの漏れも無いよう至極丁寧に消していく。
返り血を浴びない為にと身に纏っていたものやこいつを殺める為にと用意した鈍器、痕を消し去るのに今使用した道具を、これも予め用意しておいた真っ黒なビニール袋に投げ入れ、乱雑に担ぐ。
…誰かに見つかる前に、ここから去らなければ。
…こいつのこんな姿を見たら、貴方は一体どんな表情をするんでしょうね。喜んではくれないことは確かだ。泣いてしまうだろうか。ふ、と無意識に自嘲の笑みが溢れ、深く息を吐き何時もの表情に切り替え、足早にその場を立ち去った。
……全ては、貴方の為に。
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