第1章

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 「あんたがそんな料理がうまいなんて、知らなかったなあ」  いつもと同じお昼休み。  美琴ちゃんが私のお弁当を覗き込んで目を丸くする。  「失礼だなあ。うち、共働きでしょ? だから、小さい頃からけっこうお料理してんだよ」  「へえ。 しっかし、あんた、朝、苦手じゃなかったっけ? よくお弁当なんて作れるよね」  「うん、まあね……」  美琴ちゃんには言えないわよねえ。  朝から『腹減った』ってうるさいのが3人もいるから、嫌でも目が覚めるなんて……。  「で、その後、王子様たちはどう?」  「王子様って何よ?」  「ふふ。照れない、照れない。あんただって、あの3人のこと、ちょっとかっこいいって思ったでしょ?」  うっ! 美琴ちゃん、いつもながら鋭い……。  「あははは。ほら、赤くなった」  「からかわないでよ~。 もう毎日戦場みたいなんだから」  「そりゃ、ま、世間知らずだろうしねえ。ツボの中で50年だっけ?」  「そうなのよね。でも、それだけじゃないみたい」  50年前の人間がいきなりタイムスリップしてきたって、きっとあの3人みたいにはならないと思うのよね……。  「魔物は欲望に忠実って言うじゃない? 相変わらず熱烈に口説かれてるのかねえ」  うー。美琴ちゃん、他人事だと思って楽しそうなんだから。  「なんなら美琴ちゃんに1人譲ってあげようか? 誰がいい?」  「パス! 親友の男に手を出すほど、男に困っちゃいないからね」  「だから、私の男じゃないって」  「あらあら。私の男なんて、蓮っ葉なことを。やっぱり同居って偉大だねえ」  「美琴ちゃん!」  「怒らない、怒らない。冗談はさておき、最近毎日が楽しそうだってのは認めるでしょ?」  「それはね」  確かに、慣れっていうのかな、最近は、3人が何をしてもけっこう平気になってきちゃった。  それに、思ってもみなかったことをするから、毎日がハラハラドキドキで、今までの単調な生活が嘘みたい。  「ほらほら。 お友達から恋人へ変わる日も近いかなあ」  「それはない!」  「即答なところがかえって怪しいぞ~」  「もう。美琴ちゃんも今はフリーなんでしょ。私のことばかっり言ってないで、自分はどうなのよ?」  「そりゃもう、充実してるわよ~」  クスクス笑ってる美琴ちゃん。  確かに、美琴ちゃんファンの男の子って多いもんね。  
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