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「僕たちにはどうしようもないんだ。さっきみたいに、一時的に追い払ったりはできるけど」
「そう……なの……?」
「悪魔は魔物を消滅させる力は持ってないし、魔物は悪魔を消滅させる力はない。できるとしたら、天使か……人間の悪魔祓い師ぐらいだね」
「でもよ、なんでこいつ夢魔になんて取り込まれたんだ? よっぽど隙を見せるか、自分で呼び出すかでもしない限り、そうそうないぜ?」
「……自分で……!」
私は、この前の夜のことを思い出した。
聖君は、私を守るために、魔物や悪魔を呼び出すんだと言っていた。
もしかしたらあれが成功して、支配するつもりが逆に取り入れられてしまったんじゃあ……。
「ねえ……こういうことって……ありうる?」
私は、震える唇を何とかなだめて、この前の夜のことを話した。
「そう……そんなことが。僕のうっかり藤堂君に黒の書を渡してしまったのがいけなかったんだね。ごめんね」
「ううん……そんな、智哉君が悪いんじゃない」
聖君、本当にみんなを守ろうとしてがんばってた。きっとあの後も、必死になって勉強したのね。
それが……こんな結果になってしまうなんて。
「あの時止めていれば……」
「自分責めるのはやめた方がいいよ」
「でも……」
「自分を責める君を見たら、きっと藤堂君が悲しむよ」
「うん……」
聖君、がんばって・
私はここにいるから。
「……ぱい」
あ……聖君。よかった、元気になったのね。
「先輩……、先輩は危ないことをしないで……。僕は大丈夫ですから」
何を言っているの? 大丈夫なわけないじゃないの……。
「自分より大切なあなたが……傷つくのは……」
そんな悲しいこと言わないで……。
ねえ、聖君……。
……あ。
夢……?
聖君のベッドの側で、うとうとしちゃってたのね。
「……」
聖君は眠ったまま。 だけれど、最初のうちに運び込まれた時より、確実に痩せていっている。
顔色も益々悪くなり、心なしか息も弱くなっているみたい。
このまま死んでいくのを見ているだけなんて、嫌。
何か……何かしないと……。
「!!」
私は階段を降りると、おじいちゃんの書斎に駆け込んだ。そして、本棚の端から本を取り出しては戻し、取り出しては戻しを繰り返す。
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