近藤勇にテレフォンチャンス

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 私は携帯やスマートフォンなるものが出来てから確信しててね。何時かこの電波を利用して、時空を歪めて歴史上の偉人と呼ばれる人間と会話を出来る日を。私はそれを夢見て今まで研究を重ねに重ねた。そして、私は新たな通信機器……それも、過去の人間と対話出来る通信機器を製作したのだ。タイムマシンに比べれば、これくらいは造作も無い。いずれ、後の世代にでもそっちは任せよう。  さて、私はこれから近藤勇に電話をかけるのだ。何、あの時代に電話は無いだろうって? そうだったな、そこをまだ説明していなかった。実はそうなるであろうことを見越し、この機械に等価交換機能を付けているのだ。難しい話になってしまうが、つまりは、近藤勇が持つ携帯程度の価値がある道具と、私のこの機械を交換するのだ。早速、私は等価交換ボタンを押した。  手元から機械が消えたと同時に、私の手元に現れたのは刀であった。おや。どうやら大事なものと交換してしまったらしい。だが、これ程価値のあるもので無いと、私の技術と交換出来ないと言うことかもしれないな。もう一台用意していた機械を使い、近藤勇の元にある機械へと通信を開始した。うむ。予想通りすぐには出てくれない。時代が過去すぎてあの機械は恐怖や謎の対象なのだろう。だが、私は個人的に近藤勇が好きなので、最初にかけるのは彼と決めていたのだ。私は幾らでも待つぞ。椅子に座ると、その瞬間に男の声がしたので、驚いて立ち上がった。何をやっているんだ私は。気を持ち直し、声の相手に話しかける。 「はじめまして。貴方は近藤勇ですか?」 「な……何故拙者の名を……」 ビンゴだ。やった。やったぞ。私の発明は成功したんだ。実験が成功したことが嬉しく、今にも走り回りたい気持ちをグッと堪え、私は話を続ける。 「突然、貴方の大切な武器をお借りしてしまって申し訳ない」 「おお、そうだ。それを早く返してくれないか。拙者にはそいつが必要なのだ」 「分かった。しかしその前に、貴方と話がしたい」 動揺こそしているものの、案外事態を受け入れるのが早いな。さすがは新撰組を率いていたリーダーだ。 「貴方は多くの人間を率いる存在。さぞかし苦労も多いでしょう」 「そうだな。だが、率いられる存在にも、また町民にも、それぞれ苦労はつきものだ」 近藤勇クラスにもなると、言うことが違う。私なら自分のことで精一杯だと言うのに。
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