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何てことだ。神は俺に勝利宣言をしてくれたのだ。スイスロールの大食い。プレゼントにスイスロールの一カ月プレゼント券を提示しておきながら、ここでもスイスロールを食べさせてくれるなんて。ここで俺がくたばるわけにはいかない。あらかじめ用意された席に座ると、テーブルの上には俺があれほど求めていたスイスロールが乗っていた。あまりの愛おしさに、フライングしたくなる。今すぐにお前を食いたい。感覚を研ぎ澄まし、アナウンスの声を待つ。
「それでは……スタートッ!」
始まりの効果音と共に、俺と外人はスイスロールをがっつく。ナイフやフォークが置いてあるが、そんなものは必要ないのだ。この手さえあれば。外人も同じ食べ方をしている辺り、スイスロールへの愛は俺と良い勝負だろう。お前が決勝のライバルで良かったぜ、外人。
黙々と食べ続け、皿はどんどんと増えていく。僅かに、俺がリードしているか。チラッと俺が見た瞬間、奴はスピードを上げやがった。くそっ、気を抜いている間にか。考えてやがる。だがな、その程度じゃ俺のスイスロール愛には敵わないぞ。俺は片手を伸ばして次のスイスロールを寄こせと示した。黒子からスイスロールの入った皿を受け取ると、それを食べ終えた皿の上に置き、スイスロールだけを取り出して一気に二つ口に押し込んだ。
「おおっとーっ! 何とあの大きなスイスロールを一気に二つ口に入れたー!!」
良いぞアナウンス。もっと言え、そして奴を焦らせろ。俺はまだまだいけるからな。
「いや待てーっ! 何とこっちも売られた喧嘩を買った!! スイスロールを詰め込み始めたぞ!!!」
何っ!? コイツ……凄い。この俺についてこようとするなんて。これ以上は変な考えを巡らせない方が良いらしい。俺は純粋に、コイツと勝負をしよう。己の、スイスロール愛をかけて。残り時間一分、俺はただひたすらに、ケーキを詰め込んだ。
「そこまで!」
アナウンスの声で、何とか詰め込んでいたスイスロールを飲み込む。皿はすぐに黒子に回収され、数える作業に入った。
「お待たせ致しました。結果が出ましたのでお伝え致します」
俺にしては珍しく、心臓が動くのが速い。深いため息をつく。沈黙が恐ろしい。
「今回の優勝者はー……」
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