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勿体ぶるな、さっさと言え。アナウンサーを睨みつけた。だが、アナウンサーの視線は群衆を見ている。
「……抽選番号五番! 貴方ですよ」
アナウンサーは、俺の肩を叩いた。最初は急なことで実感が無かったが、群衆の歓声や、外人の拍手で徐々に実感が湧いてくる。俺か、俺なのか。
「あ、有難う御座います!」
感情が高ぶり、俺はつい泣いてしまった。アナウンサーが肩を叩く。
「それでは、優勝の品をお受け取り下さい。こちら、優勝商品の、ロールスロイスプレゼント券です!!」
「は?」
俺は、予想していた商品名と違い、つい顔をしかめていた。そんな俺の態度に、アナウンサーや群衆が眉間にしわを寄せている。
「ロールスロイス? スイスロールでは、無い?」
「スイスロールは先程食べましたでしょう。おや、もしかして貴方……隣町のスイスロール大食いフェスタと此方を勘違いしてらっしゃる?」
「え?」
ポケットに入れていたチラシを見る。確かに、町名が違った。と言うことはつまり……。
「おやおや」
俺の反応に、アナウンサーも群衆も、「あ~……」と声を漏らす。その後はブーイングの嵐だ。段々とその声に苛立ちを覚えた俺は、声を荒げた。
「だったらこんなモンいらねーよ! 持ってけ、外人」
俺は外人に紙を渡した。こんな紙切れ、俺にはどうだって良い。
「有難うございマース!」
外人はとても嬉しそうに言った。コイツは真のロールスロイス好きだと思ってたんだけどな。がっかりだ。たくさんのブーイングをバックに、俺は無言で家に帰って行った。
――
翌日、俺はどうしてもスイスロールが食いたくなり、隣町のあのスイスロール大会のやっていた店へと向かった。店員に注文を促させられると、俺はスイスロールを注文した。
「ごめん下サーイ」
久々に聞く声に、俺は振り返る。やはり、あの時の外人だ。外人は俺を無視して店員に言った。
「スイスロール、一か月分下さいな」
「一か月分!?」
俺の声を気にも留めない。店員も驚いていたが、裏へ注文を伝えに行くと、急に売り場が慌ただしくなる。しばらくして、スイスロールが一か月分……と見える程多く登場してきた。量が多すぎて台車に、それも段ボールに入れられている。これは凄い。
「オウ。良いですネ。それじゃあコレ、アナタにプレゼントネ」
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