プロローグ

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昔、同じ病気を持った人たちの集まりに 何度か行ったことがある。 そこでは皆が悩みを抱え、 懸命に偏見と向き合っていた。 自分の場合、物心ついたときには 女の子として生きていて、 人と違うことと言えば、 小さなおちんちんがついていることだけだった。 プールの授業や健康診断とかくらいでしか、 病気のことを再認識することはなかったし、 「人と違う身体」という言葉にも、 それ以上のネガティブな意味はなかった。 どうしてここにいる人たちは こんなに苦しそうなんだろう、 と思ったのを覚えている。 たしかに理解者は少ないし それぞれの状況が大変なことは 子供ながらに分かるけれど、 何だか重苦しく感じて、 すぐに行かなくなってしまった。
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