1.葵【高校二年】

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「それじゃ、団体戦のメンバー以外は解散。 押忍!」 主将の赤井がそう言うと、 約三十人いる柔道部員たちは 「押忍!」と返事をして、 早々と部室を出て行った。 赤井の言葉が意味するところ、 それはマネージャーである私が今日も、 団体戦メンバーにこの部室で レ○プされるということ。 高校二年になった春休み明け、 あの日から繰り返されている日常的なこと。 それでも今日こそは 何事もないようにと願いながら、 部室の片付けを始める。 この人たちが昨日のテレビの話をしている間に、 早く終わらせて帰らないと。 後はこのノートを棚の上段に入れてーーーーーー 「じゃ、始めっか、葵ちゃん」 いつの間にか赤井は私の後ろに立ち、 ノートを持つ腕を掴みながら耳元で囁く。 何度繰り返されても、慣れることのない恐怖。 それでも私には 自分の感情を表に出すことが許されない。
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