セピア色の夕焼けが眩しい

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「ちょっ、痛いよ、セイゴさん」 「あ、ご、ごめん」 セイゴさんは、私をそっと離した。 至近距離で、見詰め合う。 「……あの時も、あの時も、まだ完全に彼氏と切れてなかったから……」 「あの時?」 「その……セイゴさんが、キスしようとしてきた時。だから、拒んでたの」 「俺もだよ。立川さんと別れてすぐに次の子……なんて調子いいかなって、強引にはできなかった」 「うん……」 「でも、いつもこうして抱きしめたいって思ってたよ。俺のものにしたかったよ」 「うん……いいよ」 私が微笑むと、彼も微笑んだ。 そして、セイゴさんは私の両肩に手をおいた。 誰もいない公園。 私たちは、どろんこになるのも構わずに、地べたに座っていた。 そして……セイゴさんの顔が、近づいてきた。 もう、それを拒む理由なんて無い。 キスを……拒む理由など。 やがて、暖かなものが、そっと、優しく、まるで羽毛のように、私の唇に舞い降りた――。
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