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「ぺんぎんさん、好きなの?」
私が身を屈めて、その女の子にマスコットを見せる。
「うん」
女の子は頷いて、じーっと私のぺんぎんを見ている。
「あげるよ? 欲しい?」
すると少女は、両手を挙げて「欲しい!」と叫んだ。
「あはは。いいよ。はい」
私は鞄からキーホルダーを外すと、その子の手の中に落とした。
「ぺんぎんしゃん! ぺんぎんしゃん!」
女の子は満面の笑みで喜ぶ。
「みく、そんなところにいたの。あら……すみません」
その子のお父さんとお母さんらしきひとがこちらへやってきて、私たちに会釈する。
「ありがとうございます」
若いお母さんにその子は抱っこされ、喫茶コーナーの方へ行ってしまった。
「子ども、好きなの?」
セイゴさんが呟いた。
「好きっていうか、うん。普通かな」
「俺、ひとりっこだからさ、ああいう妹でも欲しかったな」
「そうなんだ」
「だから俺、結婚したら、子どもは最低でも3人は欲しいな」
「結婚願望、あるんだ?」
「ありありだよ~。もうすぐ三十路だし」
そう言って、セイゴさんは私からぱっと顔を離した。
私も視線を外す。
ふたり、同じことを思っていたみたい。
私たち、結婚するのかな……。
そう思うと、ヤケに照れてしまった。
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