セピア色の夕焼けが眩しい

19/21
前へ
/319ページ
次へ
夕暮れの観覧車は空いていて、私たちは並ばずともゴンドラに乗れた。 「うわ、ぐらぐら揺れる」 私が片足をゴンドラに入れた途端、ゆらゆらと箱は揺れたのだ。 私、そんなに重いかしら……? 「大丈夫? 俺も入るよ」 そう言ってセイゴさんも、中へ。 「ドア、閉めますね。いってらっしゃい~」 道化の格好をした観覧車のスタッフのひとが、鍵をかける。 私たちは、ふたりきり、空へと放たれた。 向かい合って座っていたけれど、ゴンドラが動いてしばらくすると、セイゴさんは私の隣へ座ってきた。 わ。また、キスできちゃうような距離……。 私はどきまぎしてしまう。 「セイゴさん、近い……」 「いいじゃん。同じ方向の景色、見たいから」 そう言って視線を外に向ける彼。 あ、そういう理由だったのね。 私といちゃいちゃしたいから、ではないのか。 私はそんな自分が恥ずかしくなった。 その思いをかき消すかのように、セイゴさんは言った。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

219人が本棚に入れています
本棚に追加