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「私のわがまま訊いてくれてありがとうございます。捺さん」
私は捺さんに礼を言う。
「礼なんていいよ。礼よりもキスさせてくれ」
私の反応を見て、口角を上げてニヤリと微笑む捺さん。
その顔は凄く意地悪。
「真に受けてマジで驚いたか?冗談だ」
周囲には大勢の人が居るのに、全く彼の眼中にはない。
やっぱり、捺さんと結婚しない方がいいいかもしれないけど、その拒否権は私にない。
捺さんはコーヒーカップを片手に持ち、ゆっくりと喉に通す。
伏し目がちな瞳。
長い睫毛が影を落とす。
黙っている彼は気品があり、貴公子風。
口を開けば、言葉遣いは悪く、濱部社長にはほぼタメ口。
濱部社長も良く彼の態度を許せるもんだ。
話が途切れ、暫く沈黙が続く。
私もたっぷりのミルクと砂糖の入ったコーヒーを喉に通した。
ふと見ると、隣のテーブルに座る女性二人組が美味しそうにシフォンケーキを頬張っていた。
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