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(9)政略結婚
~捺side~
挙式当日。
俺の親族は親父と弟の烈だけ。
親戚連中は俺と留奈の結婚をいい風に思っていなかった。
政略結婚でも、他にもっと条件の良い花嫁が居るはずだと言って反対していた。
俺の花嫁は留奈しかいない・・・
―――――あのひと夏の想い出から決めていたんだ。
俺は十字架の前で神父と留奈の登場を待っていた。
白い花の装飾で彩られたチャペル。パイプオルガンの音色が響き渡り、ゆっくりと扉が開いた。
ウエディングドレス姿の留奈とモーニング姿の藤ヶ谷社長。
二人はゆっくりとした足取りでヴァージンロードを歩く。
ベール越しに見える留奈の表情は緊張で強張っている。
そんな留奈を藤ヶ谷社長がエスコートし、俺の前で足を止めた。
「娘をよろしくお願いします。桐生社長」
「はい」と俺は返事をした。
俺はようやく留奈の王子様になれた。
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