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何の因果か運命のイタズラか、彼らはチームとなった。
彼らは車メーカーの開発チームに配属された。
それ自体は大層な名誉で望むべき仕事だった。
会社は若い感性に期待し、カーショーに出品するコンセプトカーを作れと彼らに指示したのだ。
彼らはアリとキリギリスに例えられるほど性格が違った。
方やエコカーに乗り、アイドリングストップを効かせ、給油毎に燃費を計算する。
そしてもう片方は、流線型で空気抵抗が少ないグラマラスなボディーに、ハイパワーなエンジンを積んで、週末にはサーキットに行くような男だった。
そんな二人だから意見は衝突する、究極のエコカーを目指すべきだ、イヤそんなものは見飽きている夢がない、乗って楽しいスポーツライクな車にするべきだ。
ただ、二人は純粋に車が好きでこの会社に入っただけあって、お互いに譲らなかった。
それぞれに設計し、お互いの設計図を見て文句を言う。
「ここのパーツはプレスで一体にすればネジが要らない分軽く出来る」
「このパーツは不要だ、それより形状を換えて空気抵抗を下げるべきだ」
お互いに無駄を削り、贅肉をそぎ落とし、燃費を上げるため軽く仕上げ、空気抵抗を減らす。
そしてエンジンの性能を、モーターの性能を、バッテリーの性能をと様々に工夫して行った。
十数カ月後のモーターショーに出されたその車は注目を集めた。
なぜならそのライトウエイトスポーツカーは、相反するはずの速さと燃費の両立を果たした、夢の車に仕上がっていたからだ。
二人がそれぞれに書いた設計図は、お互いに添削していく間に、結局は1枚の設計図になっていたのだ。
船頭多くして船山に登る、しかし船頭が並々ならぬ情熱を持って努力すれば、船は山をも越えて行くのかもしれない。
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