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夏月は教科書から目を上げた。
頭の中に突き刺さってくる思いがある。
―――たすけて――― !
(岡本千朗?)
薬は飮んでいるはずだった。
それにも拘らず、かなり遠い場所にいるような彼の思考を拾ってしまったのは、予朗自身の心の悲鳴が大きかったせいと、自分が意識のどこかで彼のことを気にしていたせいなのだろう。
夏月はうつむいて目を閉じた。
一瞬触れた千朗の意識を探し始める。
特定の人間の探す時にいつも薄い布のようなものをイメージする。それを意識の海の中に広げてゆくのだ。
(岡本千朗………どこにいる?)
やがて夏月の心の中に、激しい千朗の息遣いが聞こえてきた。
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