第20章

4/10
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「探した………って………」  刑事は千朗の横に椅子を引っ張ってきて腰を下ろした。 「どうしたんだい? 今日は」 「別に……。さぼりたい日だってあるよ」 「まあそうだね。特に今日は暑いしね」  刑事はポケットからハンカチを出して額の汗をぬぐった。 「このゲームセンターはあまり冷房が効いていないみたいだ」 「あの」  千朗は椅子の上で身じろいだ。 「さばったのは悪かったよ。これから学校行くよ」 「うん、そうだね。でもちょっと君と話もしたかったんだ」  刑事は親しげに笑いかけた。彼の体からは煙草の匂いがする。昔、父親からもこんな匂いがしていた。 (いやだ)と千朗は思った。 (いやだいやだ、どうか俺がこの人を潰すような真似はさせないでくれ、余計なことは言わないでくれ、俺は何も聞きたくない)  しかし刑事は話し始めてしまった。 「君は安斉先生のことを聞いた時、唯一、あの人が花を植えようとしていたことを話した生徒だったね。安斉先生は、まああんまり評判がよくない先生だったけど、君は先生が死んだことを悲しんでいるようだった……」  千朗は刑事の言葉にぎょっとして顔を上げた。 「悲しんでなんか、いないよ。俺だってあんなやついなくなってせいせいした」 「うん、たぶんそれも本当の気持ちなんだろうけど……私には―――君は悲しんでいたようにも思えるんだ」 「………」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!