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「探した………って………」
刑事は千朗の横に椅子を引っ張ってきて腰を下ろした。
「どうしたんだい? 今日は」
「別に……。さぼりたい日だってあるよ」
「まあそうだね。特に今日は暑いしね」
刑事はポケットからハンカチを出して額の汗をぬぐった。
「このゲームセンターはあまり冷房が効いていないみたいだ」
「あの」
千朗は椅子の上で身じろいだ。
「さばったのは悪かったよ。これから学校行くよ」
「うん、そうだね。でもちょっと君と話もしたかったんだ」
刑事は親しげに笑いかけた。彼の体からは煙草の匂いがする。昔、父親からもこんな匂いがしていた。
(いやだ)と千朗は思った。
(いやだいやだ、どうか俺がこの人を潰すような真似はさせないでくれ、余計なことは言わないでくれ、俺は何も聞きたくない)
しかし刑事は話し始めてしまった。
「君は安斉先生のことを聞いた時、唯一、あの人が花を植えようとしていたことを話した生徒だったね。安斉先生は、まああんまり評判がよくない先生だったけど、君は先生が死んだことを悲しんでいるようだった……」
千朗は刑事の言葉にぎょっとして顔を上げた。
「悲しんでなんか、いないよ。俺だってあんなやついなくなってせいせいした」
「うん、たぶんそれも本当の気持ちなんだろうけど……私には―――君は悲しんでいたようにも思えるんだ」
「………」
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