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千朗は目をそらしてゲームの賑やかな画面を見つめた。
(悲しい? 俺が? 安斉の死を?)
「君、ね。学校の事故の前日の夜、十四日の夜だけど、学校に行ったかい?」
刑事の言葉に千朗は凍りついた。
「夜中に、学校のそばで子供を見たっていう人がいるんだよ……」
「な、なにそれ。ア、アリバイ?」
笑おうとしたが声が震えた。落ち着け、あんなことふつうの人間にできるわけがない。だから俺にできるはずもない。
「一応ね、みんなに聞いているんだ」
刑事は声の調子を変えずに言った。
「俺が学校のそばにいたらなんなの……。俺が何をしたっていうの?」
「学校のそばに行ったのかい?」
「行ってないよ、その日は……ううん、いつも夜はコンビニに漫画立ち読みに行くもん」
ドクドクと心臓が脈打ち始めた。その音が聞こえやしないかと、千朗はシャツの襟を握りしめる。
「何時頃?」
「さあ……お、覚えてない」
「学校で、変な話がはやっててね」
刑事はまたハンカチで汗を拭いた。グレイで赤茶色の線がはいっているくたびれたハンカチだった。
「学校を潰したのも、安斉先生を潰したのも、生徒が一人でやったって」
千朗はその途端、バネ仕掛けのように立ち上がった。
「ば―――馬鹿馬鹿しい。そんなん、できるわけないじゃん!」
「その通りだよねえ」
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