第20章

8/10
前へ
/22ページ
次へ
 車のすぐ横の舗道に円形のひびが入った。まるで巨人の足跡のように、それは続けて二つ三つとこちらに近づいてくる。 「………っ」  刑事は千朗から腕を離し、そのひび割れを見つめた。 「まさか、」  彼は首を振った。それからゆっくりと千朗の方を振り返った。 「まさか………」  刑事の顔の上にひきつった笑みが浮かんでいる。だが笑いの形をしているのは口元だけで、 目は――― 「だから嫌だったんだ……そんな……目で見るから……。だから近づいてほしくないって。 そんな目で見るなよ、ねえ、刑事さん、信じないんでしょう? 信じないよね?」  刑事の口が大きく丸く開かれた。  バ  それから少し横に広く。    ヶ  小さな円形に。     モ
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加