16  もぉ、ドッキドキ!

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はうっ……。 周囲の人間全てからそんな音が聞こえてきそうな程、 一瞬、部屋の空気が凍った。 しかし俺は、瞬時には何が起こったのか分からず、ただ混乱が頭に渦巻く。 そして、なんか漫画に描かれたように左頬を手で押さえ、目を丸くしていた。 だが、鬼の形相で俺の前で膝立ちした母だけは違った。 「確かに、私は、あんたのヘタレを見込んで 女心を掴み損ねるなとは言ったわよ。 でもそれは、ケジメを失くせって意味じゃないくらい分かるでしょ。 それに、言ったわよね。 つぐみさんを泣かすような事したら、私が許さないって。 まったく、私は、何をどう間違えて アンタをこんな男に育ててしまったのか……」 そして、さっきとは違う涙を浮かべて首を振る母を前に、 さすがに俺も我に返った。
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