16  もぉ、ドッキドキ!

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「この前、来たばかりなのに、なんだか懐かしい」 乗り込んだタクシーの中で車窓を流れる景色に目を向け、 そんな事を彼女が呟く。 確かに、たった三週間なのに、 山が近いせいか、前よりも秋の気配が濃くなったように感じる。 そうして、程なく実家に到着すると、 例によって例の如くの迎えが待っていた。 「待ってたよぉ~」 お前は、どこの番犬だ。 そう言いたくなるタイミングで、チャイムを押す前に妹が玄関扉から現れる。 そして、ニヤニヤした視線を俺に向けつつ彼女を迎え入れる妹に、 弥が上にも、嫌な予感が胸をザワつかせる。 しかし、取り敢えずは何事も起こることなく、 俺たちは、家族が勢揃いした座敷で大きな座卓を囲み、婚約報告が始まった。
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