雨の日はあなたと二人で

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部活の解散はどの部活でも同じ17時と決められていて。 美術部に所属する優馬と、家庭科部に所属する私だと、下駄箱には私の方が先につく。 美術室は4階にあって、家庭科室は2階だから、下駄箱には家庭科室の方が近い。 だけど、雨の日は、優馬は少しだけ早く美術室を出て下駄箱にいるから、私の方が少しだけ遅くなってしまう。 それはまるで私を待ってくれているようで、少し嬉しかった。 私は、小さい頃から、優馬が大好きで。 いつも一緒にいたから、ケンカもたくさんしたけど、いいところもたくさん知っているし、少し近寄りがたい雰囲気がある割りに、本当はすごく優しいとだって知ってる。 小学生の頃はかわいい顔だったのに、中学に入ってからすごくクールな顔に変わっていって、女子の間では、かなりモテる部類の男子になってしまった。 だけど、私はかわいくて、あまりモテてなかった頃から、ずっと好きだった。 顔が好きなわけじゃない。同じ顔でも、優馬じゃなかったら、意味がないんだ。 下駄箱に近づいていくと、やっぱり優馬が困ったように、雨を眺めながら突っ立っていて、一年の頃から続いている当たり前の光景に、ホッとした。 『牧元君って、小学生の頃は、雨が降る日に傘を持ってこなかったことなかったはずだよ』 由佳が言っていたことを思い出すと、もしかしたら、今日はいないかもって考えてしまう。 『きっとわざと持ってきてないんだよ。絶対にいるから、早く行って。片づけはアタシがしておくから』 それでも、由佳は必ずいると言って、いつも送り出してくれる。 そして、その言葉の通り、優馬がいると、私はいつも安心するんだ。 雨の日にしか、一緒に帰ることはないし、昔ほど、話さなくなってるから。
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