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「滑り止めで琴原学園高等部受けて、一般は来見高校かなあって思ってるよ」
「やっぱり来見行くのか、じゃあ、真逆になるんだな」
琴原学園も、来見高校も、このあたりの学区では、進学校として有名な学校で、大学進学を考える私には、他に選択肢がなかったといった方がいいかもしれない。
何となく優馬も予想はしていたみたい。
優馬は、美術科のある滝野高校を志望している。
私たちが住んでいる町から考えたら、来見市と滝野市は真逆の位置になる。
だから、通学で一緒になるのは、駅に行くまでのバスの中だけ。
「だったら、あまり会えなくなるなあ」
「家、向かい側なんだから、いつでも会えるよ」
そう軽く言う私も、ちょっと心配だったりする。
会えない間に、優馬に彼女ができたりとかしたら、私は後悔しないのかな。
でも、もし、ダメだったら?
気まずくなったりしたら?
「生活時間も変わるかもしれないのに?」
「でも、そんなの、分からないよ。通ってみたら、同じくらいの時間かも」
合わせることができるなら、合わせればいいと思う。
そうすれば、この関係も持続していくはずだから。
だけど、優馬は、そう思ってないみたいで、
「その楽観的なところ、羨ましいな…」
はははと、嬉しそうに笑いながら、優馬は私の方を見た。
「綾は昔から前向きで、俺はあまり前向きになれないからさ。羨ましいよ」
「深く考えないだけだよ、優馬みたいにね」
二人で、笑っていると、時間なんてあっという間で。
気づけば、あと少しで家だった。
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