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〔え?どうして…?〕
表れたのは岡田先生。
差し出されたのは先生からもらった真っ赤なカバーをつけた携帯だった。
〔あ、携帯…昨日落としちゃったんだ。あっ!〕
折角来てくれたのにまた泣いてたら嫌われてしまう。
そう思って慌てて涙を拭ってると先生は私の隣に腰かけた。
『俺さ、教師なんだよね』
心臓がドキンと鳴る。
〔これって、先生を好きになるなって忠告…だよね〕
ドクドクと心臓が脈打ち、気持ち悪くなっていく。
「ご…ごめんな…さい」
喉の奥が苦しくて、うまく喋れない。
『だから、ハマっちゃダメなんだよ』
「………はい」
先生の口から聞こうと昨日覚悟を決めてたけど
実際言葉にされると、痛い。
止まりかけてた涙もどんどん溢れてくるけど
ダメージが大きすぎて、拭う力さえ失ってしまった。
『なのに、君と居ると“教師”って事を忘れて“一人の男”として接したくなる』
〔…え?今なんて…?〕
言葉の意味が分からなくて、俯いてた顔を上げると
少し困った顔で微笑む先生と目が合った。
そして頬に手を添えられ、親指でそっと涙を拭われる。
『ごめんね。また君を泣かせちゃった』
まだ頭がついてかなくて、ただただ先生を見つめていると
携帯を膝にポンと置かれた。
手帳型カバーは開かれてて、画面に何か映し出されてるのに気づき
また涙が溢れだした。
だってそこにはアドレス帳が開かれてて
入ってるはずのない先生の電話番号とアドレスが載ってたから。
『今度はゲームじゃなくて、俺のこと攻略してよ』
「い…いいんです…か…?」
『相手は教師。難易度ハンパないよ?』
「が…がん…頑張ります…」
涙で途切れながらも一生懸命言うと
頬に触れてた手がそっと先生の方へと顔を誘導して
―チュッ
今度はオデコじゃなく唇に軽くキスをしてくれた後
眩しいくらいの笑顔を私に向けてくれた。
『俺と“青春を謳歌”しちゃおっか』
「はい!」
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