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「私とこの子だけが住める、ちょっとだけ大きな犬小屋を下さい!」
魔女やシンデレラ達は驚いたものの、少女は真剣そのものでした。白き魔女は願いを聞き入れると、シンデレラの家の隣に、少し大きめの犬小屋を出しました。それからと言うものの、少女と犬はこの小屋で暮らし、そこから新たに見つけた仕事をしに向かうようになりました。少女が新しく見つけた仕事、それはマッチの製造業。少女に打ってつけの職業でした。
「でも、どうして犬小屋にしたの? 一軒家じゃなくて良かったの?」
シンデレラに聞かれると、少女は照れ臭そうに笑いました。
「私は、大きなものを持つような度量の人間じゃ無いって分かったので……。少なくとも、シンデレラ程の度量を持てない間は、何時も謙虚な気持ちを忘れないように、このくらいの家に住んだ方が良いと思ったんです」
「そう。大丈夫よ、きっとすぐなれるわ」
「でも、お金が付いて来ないと改築はすぐには出来ないですね」
少女は笑って言いましたが、犬小屋の中のカレンダーを見ると、ハッとしました。
「そうだ、今日は代わり番頼まれてたんだっけ!? ごめんなさい、行ってきます!」
犬のリードを引き、少女は犬と楽しそうに走って行きました。残された二人はポカーンとしていましたが、やがてあの子達らしいなぁと吹きだすと、その後ろ姿を温かく見守っていました。
(完)
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