「マッチ、ただしテメーは犬小屋だ」

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 シンデレラは、有名童話の王道ヒロインとしての功績をたたえられ、黒い衣に身を包んだ魔女から、一軒家をプレゼントされました。家をプレゼントされたシンデレラは、喜んで家の中へと入って行きます。残されたマッチ売りの少女も、胸に手を当てドキドキとしながら魔女の言葉を待ちました。以前は辛い境遇になってしまったマッチ売りの少女でありましたが、私もその功績をたたえられて今日、大きな家を貰えるんだ……! と、思いに胸をはせました。魔女がこちらを見ます。そして、魔女は口を開きました。 「マッチ、ただしテメーは犬小屋だ」  少女はしばし、目をパチクリとさせて沈黙していました。犬小屋? 犬小屋ってどんな家だっけ? 唐突なことに、意味が分かりません。魔女はケケケと笑ってマッチの背を押し強引に歩かせます。着いた先には、犬一匹が入れそうな……と言うより、真黒で目つきの鋭い犬が入っている、文字通り犬小屋がありました。それも、犬小屋のある豪邸は魔女のものでありました。つまりこれはどう言うこと? 少女が首を傾げて考えていると、魔女が説明をしました。 「マッチ。お前は生前、マッチすらロクに売れず、その上売り物のマッチを使って最後にはくたばってしまったねぇ。そんなヤツにくれてやる一軒家なんて無いよ。今回はこのマッチを売りきるまで、お前にはその家をくれてやる」  魔女はそう言うと、手を振り、少女の手元に、段ボール箱に詰まりに詰まったマッチを乗せました。 「そ、そんなことって……」 「黙れ! 言い返したいならば、自らハッピーエンドを呼び込めるようになってから言いな!!」  少女に背を向け、魔女は高笑いをしながら自らの別荘へと入って行きました。何と言うことでしょう。まさか、自分の家が犬小屋……それも、既に別の犬がいる犬小屋だなんて。  少女は、こそっとシンデレラの一軒家を覗きに行きました。あわよくば数回御厄介になろうと思ったりもしたが、まさか自分の家が犬小屋だとも言えないし……。少女はため息をついて犬小屋へと戻りました。  あれ程敬遠していたマッチを、また売らねばいかないのです。少女は犬小屋の前でペタンと座ると、その場で泣きだしてしまいました。そんな少女を追い詰めるかのように、犬は、「バウッ!」と鳴き声を上げて怖がらせます。
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