「マッチ、ただしテメーは犬小屋だ」

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 少女にとって、シンデレラは一生超えられない存在でした。それは、地位としても、人格としても。だからこそ、少女は自分の持たない全てを持つ彼女を妬みました。そして、この息子と結婚し、大きな豪邸を持った時、嫌と言う程自分の醜さを感じました。それらは、魔女やこの息子と出会っていなければ全て気づくことの出来なかったことでしょう。    そして今、彼女はそんな醜い自分と向き合い、少しずつ変われるような気がしていました。シンデレラの愛に触れられたから。 「偉いね」  白き魔女は、少女の頭を撫でました。少女はニコっと微笑みました。 「じゃあ、彼女の為に罰は免じましょう。だけど、それじゃあこの子だけが不幸を背負いすぎている。さぁ、二度とこの子に悪さをしないと誓いなさい」  イジワルな魔女と息子は、「本当に申し訳ありません。もう一切、貴方には悪さをしません」と誓い、二人ともとぼとぼと家へ帰って行きました。  厄介な二人がいなくなると、白き魔女は、少女に言いました。 「本当に貴方は頑張りましたね。さぁ、願いを言ってごらん。私が一つだけ叶えてあげましょう」  白き魔女は、ステッキを少しだけ持ち上げて言いました。魔法で何でも叶えてくれるみたいです。少女は少し考えましたが、やがて願い事を決めると、白き魔女に言いました。 「でしたら……」  … … …  翌日、シンデレラと王子は、隣にある、魔女の家とは反対方向の家へと向かいました。そこには少女と黒い犬がおり、二人はシンデレラと王子が来たことに気付くと、嬉しそうに駆け寄ってきました。 「狭いところだけど、良ければどうぞ」  少女は手を伸ばしました。シンデレラと王子はクスッと笑い、その先を見ます。 「本当に狭い所ね。私達入れるかしら?」  シンデレラは言いました。ですが、それもそのはず。  何故なら、少女が手を伸ばす先は、人と犬が辛うじて入れそうな、ちょっとだけ大きな犬小屋だったからです。  少女は白き魔女にこう願いました。
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