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「いままでお世話になったお礼、です。
たくさん迷惑、かけたから」
――意味ですか?
問われる前に遮った。
きっと聞かれてもうまく答えられない。
手紙すら書く勇気はなかったのだから。
「じゃあ、これで」
あたまを下げて、逃げるように部屋を出る。
家に帰りながら、涙がぽろぽろ零れ落ちた。
……もう明日からは先生に会えない。
黄色の薔薇の花言葉は「あなたを恋します」
三本は「告白」
いつか、先生が話してくれたのだ。
花は種類だけじゃなく、色や本数でも花言葉が変わるのだと。
黄色の薔薇なんて「嫉妬」の他に、全く違う言葉もあるんですよ、そう云っておかしそうに笑っていた。
先生はいつも淡々と話す癖に、その言葉はみんなの心に静かに染み入って。
そういう不思議な人だった。
私はそんな先生が大好きで、いつも先生のいる資料室に入り浸り、先生は毎回、苦笑しながらも私に椅子を勧めてくれた。
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