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「さむっ」
はぁーっと手に吐きかける息は白い。
冬の部活帰り。
寒いのは当然だ。
「あーあ。
手、真っ赤だね」
そっと、彼女の手が僕の手を包み込む。
「手袋しないから」
「なんか嫌なんだよ、あれ」
はぁーっ、僕の手に息を吐きかけると、彼女はそっと、僕の手を擦った。
「まだ冷たい?」
一気に温まった身体のせいで、指先がじんじんする。
急に黙ってしまった僕に、彼女が不思議そうに顔を覗き込んだ。
僕は思わずその唇に僕の唇を……ふれさせた。
「そんな可愛いことされたら、我慢できないでしょ」
真っ赤になって黙って立つ僕たちふたりに、雪が静かに舞い落ち始めた。
【終】
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