アプリの世界と現実世界との狭間

110/121
前へ
/426ページ
次へ
蘭子と沙里ちゃんはアプリの中では親友だった。 沙里ちゃんの記憶が消えた事は蘭子にとってとてもつらいと思う。 「もしかして、だから、鈴木君を焼いたの?」 しばらく目を閉じていた蘭子がボソッと言った。 「俺の判断だ。 間違っていたかもしれないけど」 「……間違ってないと思うよ。 あのままの鈴木君が現実世界に戻ってきたら危険だったと思う」 蘭子は俺にだけ聞こえる声ではっきりと言った。 「ありがとう。 俺、誰かにそう言って欲しかったんだと思う」 「大丈夫。 健一は正しいよ」 蘭子が俺の肩をポンポンと叩くと、いつの間にか俺の目から涙が流れていた。 「よく頑張ったね。 健一のおかげで、みんな現実世界に戻って来れたんだよ。 本当にありがとう」
/426ページ

最初のコメントを投稿しよう!

249人が本棚に入れています
本棚に追加