第14章 今まで通りじゃいられない

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「何でそんなことわかるんだよ」 何でと言われても。 彼のわたしに対する感情が恋愛だとは思えない、やっぱり。でもわたしのこと考えて、わたしが傷つかないように守ってくれてるのはわかる。こんなに親切に大事にしてくれるのに、この人がわたしを害するわけがないと思ってしまう。 理屈抜きで、立山くんと竹田、そして瀬戸さんの三人についてはわたしは絶対的に信頼してる。わたしが本気で助けを求めたらこの人たちは絶対に手を差し伸べてくれる。でも、それがどうして?と訊かれたら。 「…立山くんはかっこ悪いことしないから」 「何だよそれ」 何となく想定してた答えと違うのかもしれない。彼はちょっとむくれたように見えた。 「立山くんだったら、そういうことがしたかったらいくらでもスマートに出来るでしょ。相手が嫌がってるのを無理やりするような事態には持ち込まないと思う。だから、自分にその気がなければまあ大丈夫かな、と。そこいら辺の見極めもちゃんと的確にできる人だと思うし」 経験も豊富だし。と、わたしの口から言わない方がいいよね。多分。 ちょっと図星だったのか、彼が苦虫を噛み潰したような顔をした。わたしは笑って、更に付け加える。 「勿論一番の理由はわたしが立山くんを信頼してるからだよ。絶対わたしが嫌がることはしないし、どんなことからでも助けてくれるって知ってるもん。世界中の誰が怖くたって、立山くんだけは怖くない。安心して大丈夫」 「嬉しいんだか何だかなあ…」 わたしは胸の内が温かくなるような優しい気持ちに満ちて喋ったが、残念なことに彼はそれほど喜んではくれなかった。少し憂鬱そうな顔でぼそっと呟く。 「…なんか、複雑な気持ちになるのは何でなんだろう…」 「何でよ、もっと喜んでくれるかと思った。いいこと言ったのに」 「それほどでもないよ!」 …そうかなあ。 わたしは首を捻った。こんなに立山くんに対して特別な気持ちを抱いてるのに。他の人とは全然違う大切な人なのに。どうしたらそのことが伝わるのかな。 …突然、テーブルの上に置いてあったわたしの携帯が振動した。思わず反射的に画面に目をやる。ふわっと表情が緩んでしまった。立山くんが微かに眉を上げる。 「何だよ、出ろよ」 「いやメールだから。大丈夫、後で見る」 「…メール?珍しいな。LINEじゃないんだ」 何故かぱっと手を伸ばしてわたしの携帯を取った。
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