第13章 わたしには甘すぎる

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誰としても、こんな風に甘く、相手を愛しいと思う気持ちになるものなのか。これがぜんぶセックスの時の生理的な反応なんだったら。でも。 …もしかしたら、竹田にしか感じない、こいつのためだけの感情なのかもしれないし…。 わたしはそっとため息をついて奴の身体に腕を回した。それを本当に確かめるためには試しに他の人としてみるより他ない。でも。 …今のところ、こいつじゃない相手としたいとは、特に思ったことがないんだよなぁ…。 竹田との関係には満足している。こいつとしている時にはこいつのことだけ、他の人のことを思い浮かべたり考えたりすることは全くない。世界はわたしと竹田の身体だけになる。その感覚は好きだ。目の前の熱い、激しい身体に没頭できる。 そのことがいつもわたしを隅々まで満たしてくれる。 …でも、もし。いつかこいつが他の人を好きになったりわたしに飽きたりして離ればなれになったら。そのあと、吉木さんの言うようにわたしが立山くんのパートナーになることになったら。 彼との間でもちゃんとこんな風に満たされるものなのかな。それとも、相手が変わるとこれもガラッと全然違っちゃうものなのかな。 考えても答えは出ないことだけど…。堂々巡りの考えを振り切るように身を離して起き上がる。 「ご飯食べに行こうよ。すっかり遅くなっちゃったけど。まだ何処かしら開いてるよね?東京だし」 思えば何も食べずにずっとセックスに没頭してた。そう気づくと急激に空腹が迫ってくる。ベッドの上に起き上がった竹田は少し膨れた。 「えっ、飯なんか。…ちゆを食べるだけで全然いいよ。ずっとこうしてたい、二人きりで」 「すごいなあんた、逆に」 わたしはさすがに呆れた。むしろこれって腹減らないか、すればするほど。普通。奴の頬にすっと手を伸ばし、宥めるように触れる。 「あんまり食わないでいると痩せちゃうよ。それ以上痩せてどうすんの。…身体壊すほどセックスしてもしょうがないじゃん」 「太りたくなんかないよ、別に。あんまりみっともなくなったらちゆに嫌われる」 わたしの手に唇を押し当て、馬鹿なことを呟く竹田。何言ってんだこいつ。女の子か。 「そんなことで嫌いになんかなんないよ…」 いちゃいちゃが始まりかけたが、わたしの空腹顔があまりに情けなかったのか、奴はふと我に返ったように笑って立ち上がった。
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