第13章 わたしには甘すぎる

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わたしたちだってちゃんと付き合ってはいないじゃん。とはとりあえず言わないが(最近はそうでもないし)。 わたしは思わず軽く口が開けっぱなしになった。…意味がわからない。 「嘘つくなよ。てか、あんた去年まで女優専だったって話じゃん。…現にあたし、全然知らない女優の子にまですれ違いざまにねちねち嫌味言われて」 「…ああ、あれは。…本当ごめん。板橋とか後藤から結構怒られた」 思い出したように顔を顰める。 「あの後、関係のあったことのある子のとこはひと通り回って話してきたよ。でも、お前にちょっかいかけるような奴は必ずしも俺の関係した子とは限らなかったみたいで。あんた何人とやったんだよ一体、って板橋にも言われたんだけど。そんな大した人数でもないんだよ。だから、むしろお前を苛めたような奴はその子たちの周辺の連中だったみたいで」 「ふん。そんなことはまあいいよ」 わたしはウーロン茶(遠慮なくソフトドリンク)にちびちび口をつけながらふてたように嘯く。最近はもうそんなことを言ってくる女もぱったりいないし。…そうか、一応フォローは入れてくれてたんだな。肘をついて尋ねた。 「…で。何人としたの」 「えーと。…五人、か。大学に入ってから。ちゆの前に」 「なるほど」 大学入学以前に関しては不問、でまあ構わない。そこまでわたしも興味持ち切らない。 カウンターで隣に並んで座った位置から、わたしの顔を覗き込むように熱を込めて続ける。 「でも、本当に付き合ったとか恋人とか彼女とか、そういうのは全然ないんだよ。てか、なまじヘアメイク専攻だろ。授業の一環で女優の子と接することも多いし、そうやって知り合いになると個人的にカット頼まれたり、部屋訪ねたりとかいう機会があるし…。そういう中で、向こうから誘われたり水向けられたりすると、まあ、いいかなってうっかり」 「そうすか」 わたしは鶏の唐揚げを齧りつつ、半分興味を失って頷いた。まあそうでしょうね、健康な大学一年の男なら。断る理由なんか一個もないね。 「でも本当に、部屋の外で会ったり何処かへ出かけたりとか全然ないし。部屋で会ってするだけとか、みんななんの約束もない気軽な関係ばっかで…。そのうちあいつ女優とばっか付き合う奴だ、とか変な評判立つし。俺としては向こうから来るのがたまたま女優の子だけだったから…、本当に、成り行きなんだよ。まあそれも褒められたもんじゃないけどさ」
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