第13章 わたしには甘すぎる

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まあ、そうだね。 「…だからお前と会ったとき、本当にどうしていいか全然わかんなくて。だって自分から女の子に声かけたことなんか全くないんだよ、経験。中、高の時含めても…、大体自分で動かなくても何とかなってたから、それまで。…それで、お前のそばにずっといても、どうにもなる気配もなくて。ああ、これは自分から行かないといけないんだ、って初めて思ってさ」 半分残した唐揚げの皿を隣に押しやって、わたしは串揚げに手をつけた。揚げ物祭りだ。大概深夜だけど、大丈夫かな、カロリー。 「それいつ?クローゼットの時?」 奴は耳まで真っ赤になった。 「あれは、マジ…、ごめん。発狂した、としか。忘れて。…は、もらえないか、やっぱり。いや、実は…、初めて会った時から。どうやってこの子に近づけばいいのかな、とか。近くにいれば何とかなるかな、と思ったけどやっぱり何ともならなくて。どうしたらいいんだろ、と思い始めた頃にあれが起こって…。本当ごめん。理性が飛んだ」 「いいよ、今更」 あれからこいつにされまくったこと思えば。あの程度したうちに入らない。 「でも他の人にああいうやり方しない方がいいかも、あんまり」 相手によっては犯罪として訴えられるよ。奴は真っ赤な顔のまま、俯いて口ごもった。 「わかってる。本当ごめん。…お前、初めてだったのに、あんなこと…。でも、激怒はされなかったし、すごい傷つけた様子でもなかったから、もしかしてこれがきっかけで自然な流れで何か起こるかな、と期待したけどやっぱりなんもならないし」 「ならないよね、そりゃ」 少しはビタミンとらないと。と枝豆を齧る。これって野菜か、それとも豆? 「それで、思いきって、決死の覚悟で。…でも、あの時頑張って勇気出してよかった。じゃなかったらこの『今』はないもん」 ふわっと優しい色を浮かべた目でこっちを見る。…わたしは素知らぬ顔で枝豆の鞘を咥えた。急にきゅんとさせること言うな。絶対反応なんかしてやらん。 「…てか、お前。さっきから話聞いてるか、ちゃんと」 「聞いてまふ」 『飲み』というより食事なので。焼きおにぎりを口いっぱいに頬張った。竹田はまじまじとそんなわたしを見て、ややあってはぁ~、と大きくため息をついた。 「なんか…、いつものちゆに戻っちゃった気が」 「何その不満げな顔。いつものわたしの方がいいんでしょ?」
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