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「アルティナ様は、このままケイン兄様と書類上の結婚をして頂いて、我が家で身柄を預かりますが、実質上は兄様の婚約者の扱いで過ごして頂くという事です。そして暫くの間、兄には品行方正な生活を送って貰って、それをアルティン様に身近で見て頂いた上で、妹君を兄に任せても良いと判断されたら、その時は兄とアルティナ様に本当の夫婦になって頂くという事に致しましょう。どうですか? お父様、お母様」
「…………」
「ちょっと待て、マリエル! お前、何を勝手な事を言っているんだ!?」
唖然としたアルティナが言葉を失う中、ケインが血相を変えて噛みついた。しかし家族からは、次々に納得した声が上がる。
「ふむ、マリエルの主張も一理有るな。アルティン殿にこれまでのケインの悪行が筒抜けなら、さぞかしアルティナ殿が心配だろう。思わず現世に留まってしまったのも頷ける。ケイン。この際一年や二年位は、アルティン殿の信頼を取り戻す為に、頑張ってみたらどうだ?」
「父上!」
「そうですね。このままではアルティナ殿が心配で、アルティン殿がいつまでも神の国に逝けませんもの。心置きなく逝っていただく為にも、二年や三年は、実質的な婚約期間を設けては良いのではないかしら?」
「母上、何をくだらない事を」
「マリエルの意見に賛同します。兄さん。名誉挽回の為に三年や四年頑張る位、たいした事は無いよな?」
「クリフ! お前、絶対面白がってるだろ!! しかもさりげなく期間が延びてるぞ!」
狼狽しまくっているケインとは裏腹に、彼の家族は落ち着き払っており、その反応を確認したマリエルは、満面の笑みでアルティナに向かって宣言した。
「と言うわけです、アルティン様。私はアルティン様の味方ですわ! アルティン様がケイン兄様を妹君の夫と認めるまでは、アルティナ様に不埒な真似は一切させませんので、どうかご安心なさって下さいませ!!」
「あ、は、はあ……、どうも……」
反射的にアルティナが礼を述べ、マリエルは、改めて家族に確認を入れた。
「それではお父様もお母様もクリフ兄様も、異存はございませんよね?」
「ああ、そうしよう」
「アルティン殿、ご安心なさって下さい」
「妹君は、我が家でしっかりお預かりします」
「……ありがとうございます。誠に、感謝の念に堪えません」
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