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「それは別に構わないけど? 寧ろ性に合っていて楽しいし。少なくとも姉さん達みたいに、宝石だ化粧だダンスだと、くだらない事に時間を浪費するよりはるかにマシだわ」
食べる合間に平然とそんな事を言ってきた主に、ユーリアは僅かに険しい視線を向けながら、慎重に口を開いた。
「あの……、アルティナ様」
「何? ユーリア。急に怖い顔をして」
「使用人ごときが口を出す問題では無いと思いますし、英明なアルティナ様の事ですから、既に密かに考えていらっしゃるのかもしれませんが、ご自分の将来をどう考えていらっしゃるんでしょうか? これまで延ばし延ばしにして触れずにきましたが、この際はっきりと聞かせて頂きたいのですが」
その問いに、アルティナは少し不思議そうに小首を傾げた。
「私の将来?」
「はい」
「それは勿論、このまま近衛騎士団を勤め上げて、団長を目指すかな? ありがたくも何ともないけど、ご先祖様のお陰で副隊長待遇で入団して、もう緑騎士隊隊長になっちゃったし」
そんな事をすこぶる真面目に言われてしまったユーリアは、自分の主を盛大に叱りつけた。
「『なっちゃったし』じゃありません! 何ですか、その能天気極まりない発言は!? アルティナ様はれっきとした女性なんですよ、じょ・せ・い!! 男性だと偽って仕官しているのは、本来なら異常で違法なんですから!」
「そうなのよねー。『グリーバス家の男子』って事で入団試験免除で、いきなり副隊長に就任して部下を持っちゃったし。あれで入団直後は周囲からは妬まれるわ足を引っ張られるわで、信頼を勝ち取るまで本当に苦労したわよ。だけど他人から見たら、明らかに詐欺よね。陛下まで騙してるし、バレたら大変。それ以外にも色々あるし」
「アルティナ様! 真面目に答えて下さい!」
徐々に怒りを増してきた侍女に向かって、アルティナは真顔で肩を竦めてみせた。
「いや、もう本当に大変なんだから。特に生理中の勤務はキツいし、色々ごまかすのに苦労してるし。その時期は頻繁に処理しなきゃいけないから、そのせいでお腹を下しやすいと誤解されて『近衛騎士団一腹が緩い軍師』なんて、恥ずかしくてありがたくない二つ名まで貰っちゃってるのよ? ……思い出したら、なんかムカついてきたわ。本当にどうしてくれようかしら、あの馬鹿。……あれ? ユーリア、どうかしたの?」
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