第25章 マリエルの主張

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 口々に、笑顔で力強く保障してくれた面々にも、アルティナは何とか笑顔を保ちながら礼を述べ、家族からダメ出しを食らいまくったケインは、魂を飛ばした様な表情で黙り込んでいた。 「あ、それから、先程からお尋ねしようと思っていたのですが、アルティナ様はご自分の身体に、アルティン様の魂が宿っている事は、ご存じなのでしょうか?」  そこで思い出した様に確認を入れてきたマリエルに、アルティナとユーリアは一瞬視線を交わしてから、話を合わせて応じる。 「いえ……、アルティナは敬虔なグラード教の信者なので、そんな事を知られたらショックで倒れかねませんから、ユーリアには知らせるなと指示してあります」 「私も、そんな事をアルティナ様にお知らせしたら、『私のせいで、お兄様が神の国に逝けないなんて!』と嘆かれて、自ら命を絶ちかねないと思ったものですから」 「確かにその通りですね。皆、この事はくれぐれもアルティナ様には内密に。分かりましたか?」  それを聞いたマリエルは、幾分厳しい口調で壁際に佇んで一部始終を聞いていた使用人達に念を入れると、この間茫然として主達の話に聞き入っていた彼らは、無言のまま慌てて首を縦に振った。それを見て、マリエルは満足そうに周囲の者達を促す。 「それでは当面の方針は決まったし、もう休みません? さっきから眠くて、仕方が無かったの」  それを聞いた面々は、即座に同意して次々に腰を上げた。 「そうですわね。明日もお茶会がありますし、いい加減に休まないと」 「それではアルティン殿、失礼する。目が覚めてから、私達の方からアルティナ殿に先程の方針の話をしますので、ご心配なく」 「宜しくお願い致します」 「ほら、兄さん。さっさと部屋に行くよ。明日も勤務だろ?」 「ちょっと待て、クリフ。俺は彼女と話を」 「今は『彼女』じゃなくて『彼』なんだから。ここでみっともなく喚いて、アルティン殿の評価をこれ以上落とすのは得策じゃないだろ。それではアルティン殿、お休みなさい」 「はい、お休みなさい」  そして使用人達に続いて、シャトナー家の者達も次々に応接室を出て行き、最後にクリフに引きずられる様にしてケインが居なくなって、室内にはアルティナとユーリアだけが取り残された。 「ユーリア」 「……はい」
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