第3章 不穏な気配

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 相変わらず窓の外を眺めながらアルティナが淡々と応じた為、主の考えの邪魔はできないと、ユーリアは再度黙り込んだ。しかし滞在予定の屋敷が近付くにつれ、次第に顔が強張ってくる。 「アルティン様、何やら屋敷の周辺が、物々しくありませんか?」  その疑問に、アルティナは皮肉っぽく答えた。 「そうだな。王都の屋敷ならともかく、領地のど真ん中の館に、どうしてこれだけの人数を配置する必要があるのか。れっきとした理由が有るんだろうが、どう考えてもろくでもない理由しか思い浮かばないな。わざわざこちらに私を呼びつけた事自体、怪し過ぎるが……。当たって欲しくない勘が当たったと言う所か」 「アルティン様……」  何とも言い難い表情になって声をかけてきたユーリアを、アルティナは安心させる様に笑って宥めた。 「心配するな、ユーリア。言ってはいなかったが、実はデニスにも休みを取って貰って、カダルで待機して貰っている」 「兄さんが!? 本当ですか?」  唐突に出された身内の名前と、領内の端に位置する地名を聞いて、ユーリアは本気で驚いた声を上げた。それに詫びを入れながら、アルティナが話を続ける。 「悪い。領内で調査をする必要が出たら、手伝って貰うだけのつもりだったから、一々ユーリアには言っていなかったんだ」 「そうでしたか」 「ところでユーリア。“手土産”は、きちんと纏めてあるか?」  唐突に変わった話題に、ユーリアの表情も即座に引き締まった。 「ユーリアにも薄々分かってきたと思うが、おそらくあの兵士達は、私達を守る為に配置されているのでは無いな。もしもの時は……、ここで重ねて言わなくても、段取りは分かっているよな?」 「はい」  冷静に念を押してきたアルティナに、ユーリアは無駄な事を言ったり聞き返したりなどせず、短く答えて頷く。その反応に満足しながら、アルティナは笑って言い聞かせた。 「そんなに怖い顔をしなくても大丈夫だ。いきなりバッサリという事は無いだろうし、できる筈も無いさ。それに少なくとも、ユーリアの身の安全だけは確保するよ。安心して」 「……そういう事を、心配しているわけではありませんが」  もうこの主には何を言っても無駄だと、ユーリアは諦めて溜め息を吐いた。その様子を眺めながら、アルティナが自嘲的に呟く。
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