第5章 王都への急使

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「アルティン様、荷物の片付けはほぼ終わりましたが、何かご用ですか? お茶でも淹れましょうか?」 「いや、大丈夫だ。それより。今日から纏まった休暇を取らないか? 実家は馬車だったらここからすぐ行ける場所だし、暫く家族に顔を見せていないだろう?」 「それはそうですが……。アルティン様がいつまでこちらにいらっしゃるか、分かりませんし……」 「今、ラウールから話を聞いたんだが、最低でも一ヶ月はここに居る事になりそうなんだ」 「まあ、そうなんですか?」  ユーリアが戸惑いながらラウールに視線を移した為、彼は無言で頷いた。それにアルティナの声が重なる。 「だから遠慮しないで、半月程行ってきても構わない。こちらに来る事が分かってから、家族の為に王都で買い求めておいた、手土産があるだろう?」  苦笑しながらアルティナが指摘してみせると、ユーリアは驚いた表情になった。 「どうしてご存知なんですか?」 「それ位分かるさ。誰かに言付けるつもりで持ってきたみたいだが、持参して直接渡した方が、喜んでくれると思うんだが。どうする?」  そこまで言われて、ユーリアは僅かに逡巡する素振りを見せてから、主に頭を下げた。 「そこまで言って頂いて、お断りするのは却って申し訳ないですね。ありがたく休暇を頂きます」 「それじゃあ、本当に今日から行ってきて構わない。ラウールが馬車を手配してくれるから」 「それは」 「本当ですか? ありがとうございます! すぐに荷物を纏めてきますので、少々お待ち下さい!」  唐突にアルティナが言い出した内容に、ラウールが何か言いかけたが、ユーリアは喜色満面で一礼して慌ただしく応接室を出て行った。そんな彼女を見送ってから、アルティナは不満顔の彼に声をかける。 「簡素な馬車の一台位手配して、彼女を実家まで送ってくれるよな?」 「……畏まりました」  暗に「そちらの思惑通りにしてやるんだから、それ位の便宜は図れ」と求められたラウールは、仕方がないと自分に言い聞かせ、呼び鈴を鳴らしてやって来た使用人に、早速馬車を用意させた。それからさほど時間をかけず、ユーリアが大きめの鞄を二つ手に提げて戻って来た。 「それではアルティン様、荷物は全て仕分けして、戸棚やクローゼットに入れておきましたので」 「ああ、分かった。ありがとう」
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