第5章 王都への急使

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 実家の前まで送って貰ったユーリアは、地面に降り立つと御者に丁寧に礼を述べてから、前庭で花壇の手入れをしていた兄嫁に元気よく声をかけた。 「お義姉さん、ただいま~!」 「まあ、ユーリア。一体どうしたの? 連絡も寄こさずに帰って来るなんて」  驚いて顔を上げた義姉のミラに、ユーリアは自分を見張っているであろう人物にも聞こえる様に、不自然で無い程度に声を張り上げる。 「アルティン様と一緒に、今日こっちに到着したんだけど、アルティン様が暫くこちらのお屋敷に滞在する事になったから、急遽休暇を貰ったのよ。皆にお土産を持って来たわ」 「ありがとう。でも、お屋敷に来てからすぐこちらに来たの? 疲れたでしょう。早く入って」 「義姉さん、父さんと兄さんは?」 「仕事場に行ってるわよ?」  そしてミラと話をしながらユーリアが家の中に入ると、話し声を聞きつけて奥からやってきた母と妹に、囲まれる事となった。 「まあ、どうしたの? ユーリア」 「お帰りなさい、姉さん」 「母さん、義姉さん、アリエラ。お願い、協力して!」 「一体何事?」  いきなり真剣な顔で懇願してきたユーリアを見て、三人とも怪訝な顔になったが、彼女は構わずに話を続けた。 「大至急、王都に届けないといけない物があるから、今カダルに来ているデニス兄さんにそれを預けて、運んで貰うつもりなの」 「あら、あの子、この領内まで来ているの?」 「それなら、こっちに顔を出せば良いのに」  不思議そうに母のレノーラとミラが言い合ったが、ユーリアは弁解しながら話を続けた。 「アルティン様の指示で、秘密の任務として出向いているから。それで屋敷の人達には内密に、兄さんの所に行きたいんだけど、多分この家も見張られているだろうから、私が戻るまでここに居る様に取り繕って欲しいの。帰ってきたら、ゆっくり事情を説明するわ」  それを聞いた三人は無言で顔を見合わせたが、すぐにミラが笑って頷く。 「随分と物騒な話みたいね。勿論、口外しないから安心して頂戴」 「ありがとう、義姉さん」  しかし続けてレノーラが口にした内容を聞いて、娘と嫁は揃って固まった。 「それじゃあ早速、鳥小屋に飼料を届けに行きましょうか。最初は荷馬車に私が隠れて行って、帰りはあなたのふりをして帰って来るわ。あなたは監視の目が離れてから、鳥小屋を出てカダルに向かいなさい」 「ええと……」 「あの、お義母さん?」
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