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(さすがにアルティナ様曰わく、王宮一の人格者と名高いナスリーン隊長。よし、ここはその話に、目一杯乗っておくか。口コミで、グリーバス家の悪評を広げる事もできるしな)
そう算段を立てたデニスは、神妙な表情で嘘八百を並べ立て始めた。
「これは主家の内々の事ですし、本当だったら口外するべき事では有りませんが……」
「勿論、不用意に外部に漏らすつもりはありません。安心して下さい」
「それなら聞いて下さい、ナスリーン隊長。仰る通り、皆様でよってたかってアルティナ様を責めておられるそうです。悲嘆にくれておられるアルティナ様に、あれは酷と言う物でしょう」
「やはりそうでしたか……」
沈鬱な表情になったナスリーンに向かって、デニスは怒りの表情を作りながら、尚も作り話を語って聞かせた。
「『疫病神のお前の側に来たから、アルティンが死ぬ羽目になったんだ』などはまだ良い方で、『死神の上に役に立たない穀潰し』とか『他の人間に病を移すと困る』と言って、妹の話ではアルティン様の葬儀にも出るなと言われたそうで」
「何だそれは!」
「間違いなく、一番悲しんでおられるのは、その妹殿だろうが!」
「何て無神経で情の無い奴らだ! まさか本当に葬儀に参加させなかったわけではあるまいな!?」
すらすらとデニスの口から語られた内容に、ナスリーン以外の者達から忽ち憤怒の声が上がったが、デニスはそれに申し訳無さそうに頭を下げる。
「申し訳ありません、そこのところは未確認です。妹はアルティン様が亡くなった直後に、こっそり記章と短剣を持って屋敷を抜け出しましたので。妹は『憔悴しきっているアルティナ様に付いています』と言ったのですが、そのアルティナ様から『お兄様が亡くなる間際に苦労して書いた遺言と、隊長としての最期の任を果たす為の記章と短剣の返還です。私の事など構いませんから、一刻も早く王都に届けて下さい』と懇願されたそうです。それで私の所までやって来た妹は、諸々の事情を説明して、すぐ屋敷に戻りましたから。落ち着いたら詳細について、妹に問い合わせるつもりです」
「そうでしたか……。さすがはアルティン殿の妹君。何て健気な……」
そこまで聞いて目に涙を浮かべたナスリーンは、言葉を詰まらせながら、取り出したハンカチで目頭を押さえた。他の隊長達を見ても、皆同様に俯いており、さすがにデニスは居心地の悪さを実感する。
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