第6章 隊長達の驚愕

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(う……、さすがに話を盛り過ぎたか。何か、もの凄い罪悪感が……。これは下手にボロを出さないうちに、さっさと下がるべきだろうな)  そう結論付けた彼は、神妙に上司達に申し出た。 「それでは休暇を切り上げて、任務に復帰したいと思うのですが。私が所属する緑騎士隊は人事異動が確実ですし、暫くシフトの変更などもあって、バタバタするかと思いますので」  それを聞いたナスリーンは慌てて顔を上げ、デニスに頷いてみせた。 「そうですね。お引き留めして申し訳ありません。任務、ご苦労様でした。皆様も構いませんね?」 「はい。ご苦労だったな、デニス」 「後で個人的に、色々聞かせて貰うぞ?」 「それは構いません。それでは失礼致します」  そして礼儀正しく一礼して去っていくデニスを見送ってから、ナスリーンは再び暗い表情になって呟く。 「おそらくは……、妹君は、葬儀にも参列させて貰えなかったのでしょうね……」 「全く……、本当にろくでもないな」 「言うな。胸が悪くなる」  他の者達も否定する事無く、怒りと憐憫をない交ぜにした表情を浮かべていたが、ここで先程出て行ったドアから、バイゼル達が戻ってきた。 「皆、陛下に事情をご説明して、即刻、形式だけ承認式を済ませてきた。正式な御披露目は、また日を改めてと言う事になるがな」 「そうですか。それではカーネル殿、これから宜しくお願いします」 「こちらこそ、宜しくお願いします」  その場全員を代表して、隊長の中では最年長のガウェインが声をかけると、カーネルが緊張しながらも頭を下げ、その場に安堵の空気が満ちた。すると慌ただしく廊下に面したドアがノックされ、バイゼルが入室を許可すると、一人の騎士が一礼してから困惑顔で報告してくる。 「団長。グリーバス公爵が、団長への面会と司令官会議の招集を要請する為に、騎士団詰め所にお見えになっておられますが。如何致しましょうか?」  それを聞いてバイゼルが僅かに顔を顰めると、部下達も同様の心境だったらしく、はっきりとした舌打ちの音が室内に響いた。 「早速、おいでなすったか……」 「何とか間に合いましたね」 「アルティンに感謝だな」  そんな悪態を窘めもせず、バイゼルは知らせに来た部下に、不愉快極まりない声音で指示を出す。 「お通ししろ。どうせ一人で出向いて来たわけではあるまい」 「はい、同伴者が一人おられます。それではお呼びします」
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